第9回 hパラメータとトランジスタの等価回路
1 hパラメータ
hパラメータ:4端子回路の入出力解析を行うために利用する変数
⇒hパラメータを利用すると、トランジスタを電気回路に置き換えて解析可能になる

上記のトランジスタにおいて、入出力電流・電圧を上記のようにするとき、次のような方程式を考える。

この方程式の各パラメータ hx は下記のような意味がある。

このパラメータをhパラメータといい、hパラメータを使うと下図のようにトランジスタと同じ働きをする回路を表現できる。

この回路をトランジスタ等価回路という。
入力側

上記入力側回路において、入力電圧viは、@部の電流iiによる電圧降下とA部の電圧源で発生した電圧の和で表されるので、

となる。
出力側

上記出力側回路において、出力電流ioは、@部の電流源で発生した電流とA部に流れる電流(A部には電圧voが加わるので電流が流れる)の和で表されるので

となる。
エミッタ接地の場合のhパラメータ
hie hfe hoe hre
一般にエミッタ接地のトランジスタにおいては、hoe、hreは非常に小さいので、次のように簡略化したモデルで差し支えない。

次のような、固定バイアス回路における電流増幅率、電圧増幅率を求めてみる。

まず、交流分(信号分)に対する等価回路を考えてみると、次のように置き換えられる。

つぎに、エミッタ接地トランジスタのhoe、hreが非常に小さく無視できるとすると、

のように等価回路を記述することができ、さらに通常、RS≫hie
では、

となる。これは、電流が下図のように抵抗の小さいほうを流れることを意味する。

上記を利用すると、等価回路はさらに次のように簡易化でき、

この回路図より、電流増幅率を求めると、

となる。また、電圧増幅率は

となる。この結果は、符合がマイナスであるが、これは入力信号と位相が反転していることを意味している。作図による出力波形結果と同じである。
[例]
hfe=250、hie=10kΩのトランジスタを用いて、次の増幅回路を作成した。このとき、Ai、Avを求めなさい。

第9回 練習問題
- 次の回路において、設問に答えなさい。

- 交流に対する等価回路を示しなさい。ただし、トランジスタ部分は等価回路に置き換えなくてよい。
- トランジスタの部分も等価回路で示しなさい。ただし、hre、hoe は無視できるものとして、等価回路を示しなさい。
- b.で求めた等価回路において、RB≫hie とするとき、電流増幅度 Ai、電圧増幅度 Av を求めなさい。
- RC=2kΩ、RL=6kΩ、hie=3kΩ、hfe=250とするとき、Ai、Avを求めなさい。
第9回練習問題 解答